日本ユニバーサルカラー協会(UNICA) 第1回ユニバーサルカラーシンポジウム報告





2007年10月20日土曜日、南涼子が理事長を務める日本ユニバーサルカラー協会主催・横浜健康福祉局後援でシンポジウムが関内ホールにて開催されました。

ユニバーサルデザインとはすべての人に使いやすく利用できるデザインであり、色彩はその中で大きな役割を担っています。
また、色彩は誰にとってもなじみ深く身近であることから、こうしたデザインに目を向けるきっかけになればという思いから、今回のシンポジウムを開催する運びとなりました。

今回は私を含む3人の専門家による基調講演と、パネルディスカッションを行いました。








基調講演T 色覚とユニバーサルデザイン 横浜国立大学大学院准教授 岡嶋克典

現在カラーUDが注目されている要因は、「世の中が全般的にカラー化してきたこと」「技術的な発達により『使いやすくする』という付加価値に社会が支柱を置き始めていること」「高齢社会という世相がその必要性を促進させている」ことが主に挙げられる。(中略)
色とは物理的に存在するのではなく、単に見えているだけのものであり、脳の中で作った仮想世界、仮想情報である。そのため皆同じ色を見ている保証もなく、見る人によって変わる可能性がある。同一人物であっても、加齢による視覚機能の変化で、若い時と同じ色が見えているとは限らない。これがUDの必要性といえる。色の感じ方が人や加齢などのよって変わるのであれば、変わり方を理解し、そのことで出てくる不具合を補償しなければならない。視覚特性自体が違う人達は、いわゆる正常に色を見ている人たちに比べ、ハンディになることもある。それらをカバーすることがUDである。色を使うサインは数多くあるが、高齢者や色覚異常者の見え方を疑似的に体験することで、どのようにしたら良いか対策ができると考えている。




基調講演U 福祉社会に求められるユニバーサルデザインの色彩 日本ユニバーサルカラー協会理事長 南涼子

日常生活における色は様々なイメージや個性の表現、情報伝達、心理的コミュニケーションなどの役割があり、私たちの暮らしの中で非常に重要な役割を果たしている。人間には個性や特色があり、UDの色彩はそれらが考慮されたデザインでなくてはならない。つまり十人並みのデザインではなく、十人十色、百人いれば百人百色のニーズに応えることを目指したデザインである。(中略)
色は一見、見える人たちのものだと考えられがちであるが、それでは全ての人を対象としたユニバーサルカラーは実現しない。実は色が見えない人にとっても色彩は必要だと考えている。目が見えない人にとって、色彩の視覚情報、伝達機能といった価値は確かにないが、その人に色が見えなくても、その人自身は周りから見られているからである。想像してみてほしい。もし、自分が明日から目が見えなくなったとしたら、服装はどうでもよくなるものなのだろうか。周りの人から素敵に見られたいとは思わなくなるだろうか。色がわからなくてもおしゃれを楽しみ、髪の毛を明るくしている人も大勢いるし、それはあたりまえのことなのである。それでも色は無関係といえるだろうか。つまり、「機能面」では意味を持たない色も「審美性」という面では価値をもつのである。こうした考え方こそカラーUDの原点であり、ユニバーサルカラーといえるのではないか。物理的に色が見えない人を含めた色彩教育は今後必須であり、これは今後ぜひ模索し実現したい事柄である。



基調講演V ユニバーサルファッションと色彩−その可能性を求めて− 総合商品研究所代表 ユニファ(UNIFA)運営委員 森 秀男


ファッションの新しさの提案には流行色が重要であるが、ユニバーサルファッションにおいてもそのアンテナが求められる。ビジネスとしての枠組みの中でこれらを計画、提案していくため、色々な要素の調整が課題となる。ユニバーサルファッションにおけるカラーとは、ファッションビジネスにおける既存の色彩のあり方を反転させたもので、現在ビジネス展開される商品カラーの裏返し全てに実は必要だと考えている。既存のファッションビジネスカラーを反転させた同じレベルの領域にユニバーサルファッションのカラーがあり、まるでコインの裏表のような関係である。従ってブランド展開における色彩活動ではその全ての領域でユニバーサルファッションカラーが求められることになる。ユニバーサルファッションカラーは個人や様々な集団を問わず、あらゆる分野、世代、顧客に必要になるといえるだろう。今後この研究を続け、ユニバーサルファッションカラーとしての総合的な流行色情報の提案を将来は作りたいと考えている。
(中略)色は光であり、光はエネルギーである。そして光は生命を創り、力を持っている。カラー=「COLOR IS POWER」である。

 
『色の視点から考えるユニバーサルデザイン』〜心と暮らしを豊かにする色彩とは〜
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