ユニバーサルカラーReport  
  Universal Color(ユニバーサルカラー)


T.ユニバーサルデザインとは?(design for all)

 近頃テレビやラジオ、新聞で「ユニバーサルデザイン」という言葉を見聞きする機会が増えました。高齢化社会に突入して久しい今、これまでモノ作りの基準とされたいわゆる「標準モデル」はもはや過去の遺物になりつつあります。年齢、性別、障害を問わず、誰もが使いやすいデザインは多くの人に利益をもたらすものであり、その必要性が最近になってようやく問われるようになりました。一部の自治体、企業でもそうした視点に基づいたまちづくり・モノづくりに取り組み始めています。

 「ユニバーサルデザイン」はアメリカの建築家で工業デザイナーであったロナルド・メイス氏によって1980年頃から提唱された概念です。彼自身、身体に障害を持つ者のひとりであり、アメリカにおけるバリアフリー環境の推進に携わっていた経緯をもっています。

 ロナルド・メイス氏はその中でこれからの社会に本当に必要なのは高齢の人、障害のある人だけを対象とするのではなく、できる限り多くの人が利用できるデザインが必要であると考えています。。

 バリアフリーが世間でいう「弱者」と呼ばれる人達に寄り添い、視線を落とした考えであるのに対して、 ユニバーサルデザインには視線の高低そのものがありません。また、本当に美しく魅力的なものは同時に機能的であったり、使いやすいものであるというコンセプトは非常にシンプルで理に適っているといえるでしょう。


U.「十人十色」のニーズに応えるデザイン

 「十人十色」という言葉があるように、人にはそれぞれ違う「特色」があります。その色は年齢の高低、性別、身体的特性、習慣やライフスタイルによって人それぞれ異なります。

 人の特性は誰しも全く同じではありません。百人いれば「百人百色」だし、千人いれば「千人千色」といえるでしょう。。これはユニバーサルデザインにも共通していえる考え方です。

 ユニバーサルデザインは社会全体がそれぞれ特性を持つ人達の集団であることを前提としているので、「十人十色」のデザインといえます。


V.ユニバーサルデザインにおける7つの基本要件

 ユニバーサルデザインについて提唱者のロナルド・メイス氏は「全ての年齢や能力の人々に対し、可能な限り最大限に使いやすい製品や環境のデザイン」/「みんなのためのデザイン」として、7つの原則を以下のように定義しています。

原則1.全ての利用者が公平に利用できること。

原則2.柔軟に幅広く利用できること。

原則3.使い方が容易であること。

原則4.使い手に必要な情報が容易にわかること。

原則5.間違えても深刻な結果や危険につながらないこと。

原則6.最小限の労力で効率的に、楽に使えること。

原則7.アクセスして使用するための適切な広さがあること。

 この「7つの原則」はユニバーサルデザインを分かりやすく示した基本的なガイドラインです。これを起点として、人間と物理的環境との関わりにおける特性や実際的な周辺条件についてさらに詳細な検討を行うことによって、はじめて多様なニーズに答えるデザインができるのです。


W.ユニバーサルデザインにおける色彩の役割

 ユニバーサルデザインの7つの原則を展開するうえで、色彩は必要不可欠な要素であり十分に検討されるべき対象です。色について美しさと機能面で配慮することはユニバーサルデザインの実現の必須事項といえるでしょう。

 もちろんある人にとって色は手がかりとして有効でないこともあり、それだけで全てを補うことはできないケースもありますが、価値観とイメージに直結する色は、「製品・環境のクオリティ(質)」そのものに値するといっても過言ではないと思います。

 またユニバーサルデザインの色を考える場合、老化に伴う視覚の変化、機能障害の種類、色覚障害の程度やタイプ、視力のばらつきも考慮しなくてはなりません。つまり、ある障害をもつ人によく読み取れる色の組み合わせが、他の障害もつ人にとって適当とは限らないということです。

 色々な視覚特性を全てカバーするのは難しい部分もありますが、それらを理解したうえで配慮された色のデザインは、実質的な機能を高めるだけでなく
アクセシブルな環境をつくり出す手助けとなるはずです。

 利用者が物を使うのに必要な情報が得られなかったり、周囲の環境を正確に把握できないような「使えないデザイン」は機能を妨害するだけでなく、その価値を低下させてしまいます。使うのをためらわせるような「見た目の悪いデザイン」も同様です。

 色は科学から芸術、心理まで多岐に関わり実生活とも密接に関与しています。それにも関わらず、日本でそれほど重要視されていないのもまた事実です。世界の中でもおそらく、日本ほど色彩を軽視している国は珍しいといえるでしょう。その意識の低さは街の景観を見ても一目瞭然です。

 色はひとつの文化を象徴します。だから教育レベルでの色彩教育はもちろんのこと、デザインに関わる人は色彩が製品・環境の価値を大きく左右するということをもっと強く意識する必要があるし、色を選ぶ際には多角的な視点をもって十分な検討をする必要があるのです。

※アクセシブル・・・接近する、近づけるという意味。物理的なバリアや情報的バリアが存在していると目的を達成できない、または目的とする場所にアクセス(接近)することができない。


見分けにくい配色の代表例、認識しにくい段差、判りにくいサイン事例
へ続く

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